今回の英検1級は合格点が85点と高く、エッセイ問題のスコアが決め手となった人が多いようです。問題は「テロの撲滅の可能性」についてで、世界情勢の基礎知識が必要なやや難しめの問題です。そこで、今回の問題のエッセイの作り方のポイントを述べていきましょう。
Can international terrorism ever be eliminated?
□ Economic inequality □ Education □ Financial costs
□ Historical background □ International relations □ Military action
まず、それぞれの語句がproとconのどちらに使えるかを判断します。するとeconomic inequality, financial costs, historical backgrounds, military actionsは、背景知識がある人ならconsのキーポイントであることが判断できるので、反対論のエッセイが書きやすいことがわかるでしょう。educationもlack of education, fanatic educationとすればcon, international relationsもconflict-prone international relationsとすればconに使えます。proで書くとすると、 redress economic inequality through increased ODAとか、provision of proper education、improvement of international relationsなどを使ってかけないことはないが、それは条件であって何時のことが予測がつかないので苦しいアーギュメントとなります。
まずイントロでは、テロの深刻な現状を述べてから、世界を震撼させた同時多発テロの事を述べるのがいいでしょう。時間がない場合は雛形を使って、
Nowadays terrorism is one of the most serious problems in the world. Especially since the September 11 attacks there have been public discussions about how to deal with international terrorism. (時間が余ってドラマチックにするなら、Especially the September 11 multiple terrorist attacks sent a shockwave throughout the world, igniting a storm of controversy over international terrorism[generating serious concern about international terrorism])として、Personally, I believe that international terrorism cannot be eliminated for the following three reasons.と少し唐突ですが、字数制限のためボディに移ります。
Firstly, there is a long history of religious, ideological, and territorial conflicts that can lead to terrorism in many parts of the world. For example, deep-seated animosity between Arab and Israel as well as between the Arab world and Western countries sometimes cause extremist groups to commit terrorist acts.
Secondly, economic inequality or poverty, which is a breeding ground for terrorism, has been widening with increasing globalization. People in dire poverty, desperate for survival and jealous of wealth in Western countries, may resort to terrorism to vent their resentment against their poverty and huge income disparities.
Thirdly, (in addition to their extremely high financial costs(本当はこれを言うと細かくは4つにもなるが入れてしまいます), military actions can cause an endless vicious circle of violence and resentment. The Bush administration’s war on terrorism, for example, caused terrorists’ resentment against the US without eradicating international terrorism.
In conclusion, for the above-mentioned three reasons, historical background of religious and territorial conflicts, increasing economic inequality, futility of military actions despite their huge costs, it is extremely difficult to eliminate international terrorism.
さて皆さんいかがでしたか。最後の国際テロについての参考文献をあげておきましょう。是非読んで、2次試験でも重要トピックの背景知識をインプットしておきましょう。
前CIAイスラム専門高官グラハム氏は、イスラム教が存在しなくても今日の西洋と中東の関係に変わりはなかったであろうと述べており、その歴史的背景として、西洋の帝国主義的軍事介入、中東のエネルギー資源の西洋による支配、親西洋派による独裁体制、西洋の恣意的な国境作り、西洋によるイスラエルの建国と侵略とそれらに対する憤りを指摘している。故に、中東諸国に対する米国の帝国主義的軍事介入は自爆的であり、共存のためにソフトな文化理解と寛容を求める方がベターであるとも言われている。
先進国の多くの政治家は、①テロリストに利益を与えない②テロリストを特定し、監視、排除する③危機管理区域を設定し、テロリストの接近を排除し、被害を最小限度にすると述べている。これに対して、三十年来、米政府が最も重視したイスラエル首相ネタニヤフの著作『テロリズム——どうすれば西欧は勝てるか』を、西洋の権力者は全員テロの撲滅方法の愛読書として読み、これによって中東は混乱のるつぼに突き落とされ、中東がそこから抜け出すのは困難状態になったという見方がある。さらに、反対派は、①絶望の原因を解消するために貧困に苦しむ地域に援助の手を差し伸べ、医療が無い地域の人々のために医療制度を整える。②戦争をするのではなく、対話を促す。先進国の富裕層に、他の人々の苦境・実情を理解させるなどを指摘している。さらに、全ての政府が自国民・市民に対して必要最低限度の生活レベルを保証できれば、経済を背景としたテロは発生しづらい。各政府が、宗教や憲法に規定される信者や国民への義務を誠実に履行すればテロは発生しないという意見もある。
ビル・クリントンは、「テロを終息させるのは『国家を超えた共通の人類意識』で、貧困国への援助なしでテロ撲滅は不可能である。途上国では経済破綻、医療制度の不備が起き、人々は絶望感の中で生きており、世界人口の半数の人にとっては1日の生活費が2ドル未満しかなく、3年以内に1億人の人がエイズ・ウィルスに感染すると予想される状態の恐怖に苦しんでおり、これがテロ組織を生む温床になっている。テロ策として、発展途上国再建プランが必要である。」と指摘している。さらにクリントンは、「長い目では、テロリズムとの戦争という形で出費よりも、最貧国に対する債務免除の継続や発展途上国での医療インフラの整備や苦境下での政権樹立政府への支援・援助への出費の方が安くつく。」とクリントンは指摘した。例えば、アフガニスタンでの戦争は1ヵ月あたり10億ドルかかっているが、それよりも発展途上国の再建・支援に使えば、はるかに効果的に良い結果が生み出せるのである。
今回、ライティング問題のスコアが芳しくなく、英検1級にパスできなかった人も、決してdemoralized(語彙セクション4番の問題の解答)にならずに、前向きに努力を続け、精進して行きましょう。それでは皆さん、明日に向かって英悟の道を
Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る)
アクエアリーズ学長 植田一三(Ichay Ueda)